医療情報データベースで何ができるのか?

【企画要旨】

本ランチョンセミナーでは、演者が10年以上追求してきたテーマである「医療情報データベースで何ができるのか?」について、まとめてみたい。もしリアルワールドデータ (RWD)を自由に使えるならば、私たちは何ができるだろうか、医療の発展や社会のために何をすべきだろうか。
世界には様々なRWDが存在し、大きく分けて①北欧諸国や米国退役軍人データベースのような統合型 (integrated)データベース 、②英国・フランスのようなプライマリケア (primary care based)データベース、③日本のDPCデータのような病院 (hospital based)データベース、④日本のレセプトデータのような診療報酬請求(administrative claims)データベース、の4つがある。
RWD研究で世界をリードしている英国のプライマリケアデータベースの年次報告書を見てみると、RWDを用いる際のリサーチ領域の分類としては、①疾患疫学 (disease epidemiology)、②薬剤疫学 (pharmacoepidemiology)、③ヘルスサービスリサーチ (health services research)、④医療経済 (economics)に大別される。
一方、RWDを用いる「目的」の分類としては、演者は①記述(description)、②因果推論 (causal inference)、③予測 (prediction)、④層別化 (stratification)、⑤発見 (discovery)に大別できると考えている。
RWD研究の出口としては、①医療者の行動変容、②患者・住民の行動変容、③ガイドライン・添付文書などに反映、④医薬品やツールの開発、などがあるだろう。

本講演では特に、 RWDを用いる「目的」の分類について 、それぞれ事例や留意すべきポイントについて紹介する。頭が整理できたら、是非ご自身の日常業務の中から生まれるリサーチクエスチョンをもとに、いま自分の手の届くRWDにアクセスし、研究に挑戦していただきたい。(岩上)

【座長】

二宮 利治
九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野(教授)

【演者】

岩上 将夫
筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野(准教授)、London School of Hygiene and Tropical Medicine (Honorary Assistant Professor)

【プロフィール】

岩上 将夫(いわがみ まさお)
筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野(准教授)、London School of Hygiene and Tropical Medicine (Honorary Assistant Professor)
2008年 東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部附属病院や徳洲会湘南鎌倉総合病院にて内科研修後、東京大学大学院公共健康医学専攻(公衆衛生学修士課程)、英国留学(London School of Hygiene and Tropical Medicine 疫学修士課程、博士課程)を経て、2018年より筑波大学に着任、2022年より現職。専門は内科学、薬剤疫学、臨床疫学。
社会医学系指導医、日本臨床疫学会専門家、日本内科学会認定内科医。国際薬剤疫学会誌「Pharmacoepidemiology and Drug Safety」 Associate Editor、国際腎臓学会誌「Kidney International」 Editorial Board member。
著書に「医薬品に関する臨床系論文の読み方 ランダム化比較試験からリアルワールドデータ研究まで」、「膨大な医学論文から最適な情報に最短でたどり着くテクニック」、「超絶解説 医学論文の難解な統計手法が手に取るようにわかる本」など。