多施設共同疾患レジストリ構築の長所と課題
~SLE多施設レジストリ(Lupus registry of Nationwide institutions:LUNA)の構築と通して~

【企画要旨】

我が国でもNDBなどレセプト情報を中心としたさまざまなビッグデータを用いた研究がはじまり,ビッグデータは医療資源の効果的な活用に役立てられている。しかしながら、アウトカム情報の少なさ、病名の妥当性など多くの問題を有する。その1つの解決策がレジストリ研究である。我々が診療対象としている膠原病疾患はその希少性から単施設研究では症例集積が困難であり質の高い観察研究は困難であるため、多施設研究が必要となる。
今回の講演では、SLE多施設レジストリであるLUpus registry of NAtionwide institutions:LUNAレジストリをご紹介する。2022年4月から全国21施設が参加し1850例が集積され、2023年度は2500例の集積が期待される。企業との共同研究、バイオバンクの利活用が開始となり、創薬にも発展することが期待され、実際の運用、今後の方向性についてお伝えしたい。また、対応すべき最も重要な課題は、データの質の担保である。信頼性の高いデータの収集には、データ取得の標準化(SLEDAI、SDIのカウント方法など)、データの妥当性の確認(Source Document Verification:SDV)、ログを残せる仕組み作り(EDC使用)、データ固定日の記録、データベース管理の人材確保、欠測値対応などが必要となる。皆様の研究活動にご参考になれば幸いである。

【座長】

佐田 憲映
高知大学医学部臨床疫学講座

【演者】

矢嶋 宣幸
昭和大学医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門