アカデミックジェネラリスト

【企画要旨】

スペシャリストが自分の武器となる検査機器や治療法を携えて、そのニーズのある臨床現場や患者の診療をすることで、いわば自分の診療スタイルをある程度固定させて活躍する特徴がある一方で、ジェネラリストと呼ばれる総合内科医、総合診療医は、臨床現場や患者のニーズに応じて自分の診療スタイルを変化させて対応するという特徴を持っている。
今回議論する「アカデミックジェネラリスト」とは、単に研究をするジェネラリスト、というのではなく、「その研究自体も多岐に渡ってジェネラルである」という側面を強調するための企画としたい。つまり臨床現場のニーズに応じて自分のスタイルを変化させているため、臨床研究についても、現場のニーズに応じて差し迫ったリサーチクエスチョンに対して分野を問わず柔軟に研究することができる存在であり、それがゆえに研究テーマが多岐にわたる、と考えられる。また、アカデミックジェネラリストは、研究メインではなく臨床をメインに置きながら、問題解決の1つの手段として研究をおこなっている、という側面がある。つまりGeneral academicsではなくAcademic generalistsである。
この企画では臨床現場でアカデミックジェネラリストとして実際に活躍されている3名の方を演者としてお招きし発表をおこない、全体議論で「アカデミックジェネラリスト」について深堀りし、ジェネラリストのアカデミアの魅力と発展について考察する有意義な時間としたい。

【座長】

濱口 杉大
福島県立医科大学 総合内科 教授

【演者】

高田 俊彦
福島県立医科大学白河総合診療アカデミー 准教授
山田 淑恵
京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 医療疫学分野 助教
山梨 啓友
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 先進予防医学共同専攻 総合診療学分野 准教授

【プロフィール】

高田 俊彦
千葉大学医学部附属病院総合診療部において、診断学を重視した診療および研究の修練を積んだ後、2011年より君津中央病院総合診療科の立ち上げを行う。2015年より福島県立医科大学白河総合診療アカデミーの立ち上げに参加。2018年よりオランダのUniversity Medical Center Utrechtにて診断精度研究や予測モデル研究に従事。2021年夏に帰国後、白河総合診療アカデミーに復帰。市中病院で臨床に携わりながら臨床研究を実践するモデルの確立に情熱を注いでいる。
山田 淑恵
2011年に福井大学医学部を卒業し、福井大学医学部附属病院にて初期臨床研修を修了。2013年に同救急部総合診療部に後期研修医として入局。福井県立病院救命救急センター、大阪府泉州救命救急センターにて救急科研修後、2018年に福井大学医学部附属病院にて救急科専門医を取得。同年京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻博士課程に入学、2022年4月より現職。大学院在学中より、洛和会音羽病院救命救急センターや、よしき往診クリニックに勤務し、現在も非常勤として救急医療、訪問診療に従事。
救急患者診療(予後予測)や高齢者医療(ワクチン接種、在宅看取り)などの研究に取り組み、「医療のはざまで不幸な目に遭う患者を減らす」という目標のもと、臨床研究の世界に足を踏み入れた。
山梨 啓友
2006年札幌医科大学医学部卒、横須賀市立うわまち病院にて初期臨床研修。医療福祉生協連家庭医療学レジデンシー・東京で家庭医療研修、大井協同診療所所長を経て、2012年より長崎大学熱帯医学研究所臨床感染症学分野で感染症診療に従事。2013年より長崎大学大学院医歯薬学総合研究科離島・へき地医療学講座に所属し、長崎県五島列島で地域基盤型コホート研究の立ち上げに関わる。在任中に国境なき医師団派遣医師として結核診療、ロヒンギャ難民のジフテリアアウトブレイクなどに従事。2018年より長崎大学病院総合診療科・感染症内科で診療。同年国際緊急援助隊感染症対策チームで麻疹アウトブレイクの緊急診療支援派遣。2021年10月より現職。
高齢者のフレイル、サルコペニアなどの研究に関心があり、現在はロンドン熱帯医学衛生大学院校との連携大学院でインドAPCAPSとMultimorbidityに関する国際共同研究を行なっている。