リサーチクエスチョンにおいて何が最も重要なのか?
Feasible, Interesting, Novel, Ethical, Relevant

【企画要旨】

すべての臨床研究の出発点は、リサーチクエスチョン(RQ)です。生まれたばかりのRQは、その段階では改善すべき点を複数有していることが多いです。そのため、研究者には多面的かつ客観的にRQを何度も評価し磨き上げることが求められます。Hulleyらは、このような評価の過程において重要なポイントとしてFINERを提唱し、多くの研究者の間で使われています。FINERは、F:Feasible(実現可能な)、I:Interesting(興味深い)、N:Novel(新規性がある)、E:Ethical(倫理的な)、R:Relevant(切実な)という5つポイントで構成されています。これらのポイントはいずれも重要ですが、あえてFINERの中でどれがもっとも重要かと問われると意見が分かれるのではないでしょうか。

本セッションでは、経験豊富な臨床疫学研究者に、各ポイントの意義について討論をしていただきます。討論を通して、RQに求められる要素の本質がより明確になり、参加者ご自身の臨床研究に活きることを、委員会一同願っております。

【座長】

佐田 憲映
高知大学医学部臨床疫学(特任教授)

【演者】

佐々木 彰
京都大学医学部附属病院 臨床研究教育研修部/特定講師
福島県立医科大学 臨床研究イノベーションセンター/特任准教授
山本 良平
福島県立医科大学 臨床研究イノベーションセンター助手
出口 尚人
武田薬品工業株式会社 医療政策・ペイシェントアクセス統括部
大前 憲史
福島県立医科大学附属病院 臨床研究教育推進部(副部長・特任准教授)
土方 保和
北須磨病院 脊椎・腰痛センター 副センター長
京都大学大学院 医学・医科学専攻 地域医療システム学 臨床疫学グループ 非常勤研究員
京都大学大学院 社会健康医学系専攻 医療疫学 非常勤講師・客員研究員

【プロフィール】

佐田 憲映(さだ けんえい)
1997年 岡山大学医学部医学科卒。岡山大学腎・免疫・内分泌代謝内科学にて、リウマチ膠原病・腎臓病に関する臨床・臨床疫学研究・教育に携わった後、2020年より現職。高知県西部で、地域医療に携わりながら臨床研究を学ぶ「高知県臨床研究フェローシップ」で4名のフェローの研究指導を行っている。
専門は臨床疫学、リウマチ膠原病学、腎臓病学、総合内科学。
日本臨床疫学会上席専門家。日本リウマチ学会・腎臓学会評議員。ANCA関連血管炎診療ガイドライン2022作成統括委員はじめ、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症や急速進行性腎炎症候群の診療ガイドライン、CKD診療ガイドライン2023など、多くのガイドライン作成に携わる。
佐々木 彰(ささき しょう)
福岡大学医学部医学科卒業後、 株式会社麻生 飯塚病院で初期および後期研修修了。2011年より聖マリアンナ医科大学 腎臓高血圧内科で専門研修。2014年からは、福島県立医科大学 臨床研究イノベーションセンターに初代フェローとして在籍。同時に、京都大学大学院 社会健康医学系専攻 医療疫学分野博士 後期課程にて疫学の研鑽を積む(2017年同課程修了)。2017年より再び株式会社麻生 飯塚病院に戻り、腎臓内科医長および臨床研究支援室 チーフアドバイザーとして、診療と共に院内職員の臨床研究指導に従事。2022年より現職にて幅広い対象に臨床研究の指導を行っている。
山本 良平
2012年東京医科歯科大学を卒業し、亀田総合病院で集中治療医として働いた。その後は京都大学大学院を経て、現在は福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンターでリサーチフェローとして臨床研究に従事している。
出口 尚人
2008年九州大学薬学部卒、同大学院修士課程修了後、2010年より武田薬品工業株式会社 開発部門に所属し、糖尿病治療薬の承認申請業務を担当。2014年からメディカルアフェアーズ部にて主にリアルワールドデータを用いたエビデンスジェネレーションを行う。2021年に現職のマーケットアクセスに所属し、薬価制度に基づく費用対効果評価及び医療機器の保険償還を担当している。また、2020年に京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 医療疫学分野にて博士学位取得。日本臨床疫学会の認定専門家。
大前 憲史(おおまえ けんじ)
2003年 名古屋大学医学部医学科卒。臨床研修後10年間、癌手術を中心に泌尿器科医として研鑽。東京女子医科大学泌尿器科(助教)、京都大学大学院医療疫学分野(博士後期課程)、福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター(研究フェロー)などを経て、2020年より現職。社会健康医学博士、社会医学系専門医、日本臨床疫学会上席専門家、日本泌尿器科学会専門医・指導医。専門は臨床疫学、良質なエビデンスをいかに効率的かつ効果的にユーザーに届けられるかが近年の関心事。著書に「医学論文査読のお作法 査読を制する者は論文を制する」(健康医療評価研究機構)などがある。
土方 保和(ひじかた やすかず)
<学歴>
2005年 徳島大学医学部卒業
2019年 Master of Public Health(京都大学)
2022年 Doctor of Public Health(京都大学)
京都大学院 地域医療システム学 研究員
京都大学院 医療疫学分野 非常勤講師・客員研究員
<職歴>
2005年 小文字病院 脊髄脊椎外科
2009年 中村記念病院 脳神経外科
2010年 新武雄病院 脊髄脊椎外科
2012年 新小文字病院 脊髄脊椎外科治療センター
2019年 北須磨病院 脊椎・腰痛センター
<所属学会・資格>
日本脳神経外科学会(専門医)、日本脊髄外科学会(指導医・代議員・データベース委員[副委員長]・診療報酬委員・ガイドライン作成委員)
<受賞歴>
2019年 京都大学院課題研究優秀賞
2020年 第10回日本MIST学会Award
2023年 第13回日本MIST学会論文Award