Real World Data研究におけるコードシェアリング ー Outcome Definition Repository

【企画要旨】

Outcome Definition Repository Taskforce (ODR-TF)は、日本臨床疫学会、日本疫学会からの協力を得て、2019年2月28日に発足した。ODR-TFのミッションは、医療情報データベースを用いた研究で使用されたアウトカムの定義を集約したオンラインレポジトリを構築し、関連する学会間の協力下で知識を蓄積し共有することで、データベース研究の科学的妥当性の向上を目指すことである。ODRではアウトカム定義及び引用元論文の書誌事項の登録と検索が可能である。2023年5月16日に試用版ODRが一部会員に公開され、現在意見収集のためのテスト運用がなされている。
ODRへのコード定義登録は、会員により自著論文について登録することとし、Creative Commons準拠の論文を登録可能としている。現在までに、既報250報超が登録されている。今後ODRの利用・登録推進のために、メリットの周知活動と活用についての議論を行う。

【座長】

漆原 尚巳
慶應義塾大学薬学部医薬品開発規制科学講座

略歴:
1992.3 北海道大学薬学研究科 薬効学 修士課程修了
1992.8 Vanderbilt University (Nashville, US) English Program 短期留学
1995.4 日本イーライリリー(株) 臨床開発部、安全性情報部
2008.3 京都大学大学院医学研究科 医療疫学分野 博士号取得
2008.4 京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学分野 特定助教 着任
2012.10 同研究科 医の倫理委員会 特定講師
2013.9 慶應義塾大学薬学部 医薬品開発規制科学講座 准教授 着任
2016.4 同講座 教授 現職
2019.10 日本薬剤疫学会 理事長
隈丸 拓
東京大学

  • 隈丸 拓
略歴:

2005年 東京大学医学部医学科卒業
2010年 ハーバード大学公衆衛生大学院 公衆衛生学修士(MPH)取得
2015年 ハーバード大学公衆衛生大学院 科学博士(ScD in Epidemiology)取得
2015年 東京大学医療品質評価学講座 特任助教
2019年 同 特任准教授

日本臨床疫学会データベース活用委員長(2020年~)、日本薬剤疫学会理事・評議員(2021年~)、NCD統計解析委員会委員(2021年~)

【演者】

松井 信智
IQVIAジャパン

要旨:
2018年に改正GPSP省令が施行され、製造販売後データベース調査が解禁された。これにより、新薬の安全性をRWDで検証できるようになったが、それと同時にアウトカムの精度がより重要となってきた。海外ではアウトカム定義とバリデーション研究の結果が蓄積され、その後の他研究において参考とできるが、日本ではまだ蓄積が始まったばかりである。本セッションでは、RWD解析受託者の立場を中心に、アウトカム定義とバリデーション結果が蓄積されていないために生じている問題や、海外での解決方法を共有した上で、ODRへの期待について発表する。
略歴:
アステラス製薬からキャリアを開始し、その後プライスウォーターハウスクーパースに参画。多様な産業の事業戦略・業務改革からシステム構築まで幅広いコンサルティング案件に従事。
2010年からIQVIA Solutions(旧IMS)にて医療ビッグデータ事業の立ち上げを担当。
現在はVice Presidentとして、IQVIA Services(旧Quintiles)のCRO事業も併せて統括し、より幅広いサービスを業界に提供中。
保有資格は薬剤師と中小企業診断士。
寺島 玄
一般社団法人医療データベース協会/株式会社JMDC RWE事業部 部長

  • 寺島 玄
タイトル:
「コード定義は誰がする?」
要旨:
利活用しやすいリアルワールドデータ(RWD)として診療報酬請求データ(レセプトデータ)やDPC調査データがあり、JMDC社やMDV社が提供するデータがその代表格としてあげられる。そうしたデータは保険請求やDPC評価のために作成されている。一方でこうしたデータを使用する場合、XX病の診断があるというような条件は単にコードを並べるだけでは適切に評価できないケースがあり、XX病を示すコード定義を事前に十分に検討する必要がある。こうした疾患等のコード定義について、共通の定義リスト、公開情報で決められたものがあるわけではないため、この定義に非常に苦労するケースが多い。今回のODRはこうした課題を解決が期待できる仕組みであり、データベンダーからの目線でこれまでの実態やODRの可能性について考えたい。
略歴:
2013年、株式会社日本医療データセンター(現:JMDC)に参画。
製薬/医療機器/アカデミアに対して医療データのコンサルティングを行う。データ活用が拡大する中、多くの企業でデータ活用のサポート、データ導入支援や利活用基盤整備に協力する。現在は、製薬企業のデータベース研究支援を行い、研究のサポートや事業拡大を模索中。JMDCサイト上で、コラム「RWDのリアルなボヤキ☆」を連載中。
個人活動として、世界遺産『沖縄・西表島』を愛し『初めての西表島』体験サポートを行っている。
原 梓
慶應義塾大学薬学部医薬品開発規制科学講座
日本薬剤疫学会Outcome Definition Repository Taskforce

  • 原 梓
要旨:
Outcome Definition Repository(ODR)は、日本臨床疫学会、日本薬剤疫学会、及び、日本疫学会が共同で構築し、2023年5月より限定公開を行っている、医療情報データベースを利用した研究で用いられたアウトカム等の各種定義を集約したオンラインレポジトリである。関連する学会間の協力下で知識を蓄積し共有することで、データベース研究の科学的妥当性の向上を目指している。本講演では、ODRについて概説し、さらに、2024年4月からの3学会会員への公開に先立ち、ODRの使用方法のデモンストレーションを行い、参加者にアウトカム等定義の検索・登録を試していただく機会としたい。
略歴:
2009 東北大学大学院薬学研究科博士後期課程修了
2008-2010 独立行政法人日本学術振興会特別研究員
2010-2012 財団法人がん研究振興財団 リサーチ・レジデント
2012-2013 国立研究開発法人国立がん研究センター がん研究特別研究員
2013-2016 University of Leuven, Belgium及びErasmus MC, The Netherlandsに留学
2014-2016 独立行政法人日本学術振興会海外特別研究員
2016-2019 昭和薬科大学 社会薬学研究室 准教授
2019- 慶應義塾大学薬学部 医薬品開発規制科学講座 准教授(現在に至る)
杉原 亨
自治医科大学
医学博士(PhD)、公衆衛生専門職修士(M.P.H.)

  • 杉原 亨
タイトル:
「Outcome Definition Repository(ODR) 利用者の視点から」
要旨:
ODRの整備は、研究の負担の軽減化や定義の統一性を高める点から高い有用性が期待される。
実際にODRの中身をみてみると、定義の標準化と統一性に関して、バリエーションがあり、これ自体がデータベース研究における、疾患定義の標準化の難しさや異なる専門家の意見の違いによる課題を見える化した現状を反映しているともいえる。
教育やトレーニングに用いる注意点や限界を知っておく必要があるものの、透明性と公開性の担保により専門家や利用者からのフィードバックをうけて、これらの課題点もブラッシュアップしていくことが期待される。
略歴:

平成17(2005)年 東京大学医学部卒業
平成23(2011)年 東京大学大学院医学系研究科公共健康医学(SPH) 卒業。
平成25(2013)年 米国 クリーブランドクリニック Department of Quantitative Health Sciences へ留学。
東京大学、東京医科大学の泌尿器科部門の勤務をへて
平成30(2018)年から 自治医科大学腎泌尿器外科学講座 講師(現職)

専門は泌尿器科学,ロボット支援手術
主な資格は日本泌尿器科学会認定専門医・指導医,日本臨床疫学会認定,臨床疫学専門家