【LT中級1】因果関係における効果の異質性評価
11.3/13:15〜13:45
井上 浩輔
京都大学 特定准教授
【企画趣旨】
臨床現場にいると、同じ疾患を有する患者さんにおいても、特定の治療・ケアに対してよく反応するケースと、全く反応しないケースに遭遇することは稀ではない。そのばらつきの要因は様々だが、一つの要因として治療効果が一定でないことが挙げられ、これを因果推論の文脈では「効果の異質性」と呼ぶ。効果の異質性を考慮することは、誰に介入するべきか、曝露・介入後どのような集団を注意してモニタリングするべきか、といった臨床プラクティスに直結する情報を得るために重要である。
本講演では、疫学研究で因果関係を検討する際に、なぜ効果の異質性を評価する必要があるのか、そして効果の異質性を評価するにはどのようなアプローチをとればよいか、について説明する。更に古典的な手法の紹介に加え、近年急速な発展を遂げている機械学習モデルを効果の異質性評価に応用した最新の研究も紹介することで、効果の異質性研究がどのような方向に向かっているか、それにより未来の医療はどう変わるのかについて、皆さんと一緒に議論していきたい。
【プロフィール】
2013年 東京大学医学部卒。国立国際医療研究センター、横浜労災病院を経て、2021年 UCLAで博士号(疫学)取得。同年4月より京都大学大学院医学研究科 社会疫学分 野 助教、2023年4月より同分野及び京都大学 白眉センター 特定准教授。医学部付属病院 糖尿病・内分泌・栄養内科で診療にも従事。International Journal of Epidemiology編集委員、伊藤病院 疫学顧問。主な研究テーマは、臨床医学における因果メカニズムの解明と、社会背景因子によるその異質性評価。2023年に提唱した「高ベネフィット・アプローチ」が評価され、MITテクノロジーレビューの「未来を創る35歳未満のイノベーター」の1人に選出された。