【特別講演】わからないことを引き受ける力

【演者】

日比野 克彦
東京藝術大学 学長

演者紹介 (筧 善行先生筆)

超高齢化の進行と加速化する人口減。AIによる未来予測で日本が生き残る唯一つのシナリオは、「持続可能な地方分散型社会の実現」。現実はこのシナリオと逆行する流れがせき止められない日本。
現代アートの旗手の一人である日比野克彦氏は、美術館を飛び出し様々な地域でアートプロジェクトを展開してきた。2022年4月から東京芸術大学学長を務める同氏は、社会の様々な領域の課題に対してアートの力で新たな価値を創り未来を切り開くため、「芸術未来研究場」を設置した。さらに2023年度から開始された「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(文科省・日本学術振興会)」において香川大学と連携し、地方/地域型の共創モデルを構築するため、香川県に「芸術未来研究場瀬戸内エリア」を開設した。芸術未来研究場で展開する5つの研究領域の一つである「ケア・コミュニケーション」では、医療や福祉、地域コミュニティーにおいてWell-beingを実現する社会づくりに貢献するアートの社会的価値を探求する。まさにWell-being実現のための文化的処方箋づくりである。
アーティストには「分からないものを引き受ける力」があると日比野氏は言う。AIの登場で新時代が到来した医療の世界においても、医師に最終的に求められるのは、やはり分からないもの(治せない病)を引き受ける力であり、覚悟ではないだろうか。

【座長】

筧 善行
香川大学 前学長

略歴

1981年3月 京都大学医学部卒業
1989年3月 京都大学大学院医学研究科修了(医学博士)
2001年4月 香川医科大学泌尿器科教授(2003年大学統合で香川大学教授)
2015年10月 香川大学理事・副学長
2017年10月 香川大学学長
2023年10月- 香川大学イノベーションデザイン研究所所長