【データベース研究部会企画】データベース研究部会Special Interest Group活動報告
11.3/13:15〜14:45
【企画趣旨】
日本臨床疫学会は2024年度より新たにデータベース研究部会を立ち上げました。リアルワールドデータを活用した研究を、独りで行うことはほぼ無理です。臨床医学、疫学、統計学、医療情報学などのプロフェッショナルが集い、学際的な研究体制を敷くことが理想です。データベース研究部会では、特定の臨床領域や研究分野にフォーカスしたSpecial Interest Group(SIG)を複数編成し、当該領域・分野に関心のある同志たちが集う場を提供します。この企画では、すでに活動を開始している3つのSIGの活動内容を紹介し、今後の展望についてディスカッションします。また、会員の皆様から新たなSIGの立ち上げの案を募集します。
【SIGリーダー】
- 1.リアルワールドデータを用いた救急・集中治療領域の研究支援〜臨床医と疫学家・統計家とのリエゾンを目指して〜
- :中島 幹男東京都立広尾病院 救命救急センター 部長・センター長
-
中島 幹男
- 略歴:
- 平成14年、近畿大学医学部卒。浜松医大第2内科、島田市民病院、榛原総合病院で呼吸器内科医として勤務。平成21年、杏林大学救急医学助教、平成24年、都立広尾病院救命救急センターで救急・集中治療医として勤務。平成29年、東京大学SPH、令和3年、救急振興財団救急救命東京研修所教授、令和5年より都立広尾病院救命救急センター長・部長。
- 2.自治体との共同によるリアルワールドデータ研究
- :山名 隼人自治医科大学 講師
-
山名 隼人
- 略歴:
- 平成23年、東京大学医学部医学科卒。JR東京総合病院、東京大学医学部附属病院で勤務。東京大学大学院で公衆衛生学と臨床疫学を学び、東京大学院医学系研究科ヘルスサービスリサーチ講座特任助教・特任講師を経て、令和4年より自治医科大学データサイエンスセンター講師。Annals of Clinical Epidemiology編集委員。
- 3.レセプトデータによる疾患捕捉のアルゴリズム開発とバリデーション
- :隈丸 拓東京大学 特任准教授
- :竹内 由則横浜市立大学 准教授
-
隈丸 拓 -
竹内 由則
- 隈丸 拓 略歴:
- 平成17年東京大学医学部医学科卒。初期臨床研修後、ハーバード公衆衛生大学院にて薬剤疫学を学び、2015年に科学博士(疫学)取得。帰国後、東京大学大学院医療品質評価学講座にて大規模臨床レジストリやレセプトデータベースを基盤にした研究に従事。2019年より同講座特任准教授。日本薬剤疫学会理事、Annals of Clinical Epidemiology編集委員。
- 竹内 由則 略歴:
- 平成19年東京大学農学部獣医学課程獣医学専修卒。東京大学附属動物医療センターにて小動物医療に従事した後、平成23年に博士(獣医学)、平成24年公衆衛生学修士(いずれも東京大学)を取得。修了後は(独)医薬品医療機器総合機構調査専門員、東京大学大学院生物統計学分野特任助教・助教、東邦大学医療統計学講師を経て、令和5年より横浜市立大学データサイエンス学部准教授。専門領域は統計的因果推論、医療統計学、薬剤疫学。日本薬剤疫学会理事、同学会認定薬剤疫学家。日本計量生物学会企画委員。
【座長】
- 康永 秀生
- 東京大学 教授
-
康永 秀生
- 略歴:
- 平成6年、東京大学医学部医学科卒。卒後6年間、東京大学医学部附属病院、竹田綜合病院、旭中央病院で外科臨床に従事。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学(博士課程)、同研究科医療経営政策学特任助教・特任准教授を経て、平成25年より同研究科臨床疫学・経済学教授。日本臨床疫学会理事。Annals of Clinical Epidemiology編集長。
【SIG1】(20分)
リアルワールドデータを用いた救急・集中治療領域の研究支援
〜臨床医と疫学家・統計家とのリエゾンを目指して〜
中島 幹男
- 要旨:
- 臨床疑問(CQ)を持ち, 臨床研究をしたい臨床医は多いが, そのCQを臨床研究に繋げることのできる臨床医は少ない. 我々は2018年に「救急・集中治療分野におけるクリニカル・クエスチョン検討会」を立ち上げた. 本検討会では臨床医にCQを持ち込んでもらい, 研究可能なものとなるようにグループディスカッションやフィードバックを行った. 2024年5月まで計24回開催した. 共同研究が可能となった場合は専属のチューターを付け,レセプトデータベースを用いて研究計画書の作成, データ解析, 論文執筆のサポートを行なった. これまで46個のCQの持ち込みがあり, 2024年5月現在24本の英文原著論文を出版した. 所属施設に臨床研究の指導者がいない場合に, 臨床医と疫学家・統計家のギャップを埋めるリエゾンの存在意義は大きいと考えられる.
【SIG2】(20分)
自治体との共同によるリアルワールドデータ研究
山名 隼人
- 要旨:
- レセプトデータなどのリアルワールドデータを研究に活用するための方法の1つとして、県や市町村などの自治体と共同で研究を行うことが挙げられる。自治体との共同研究は、データ提供の協力が得やすい点や、臨床疫学研究に加えて医療政策研究を実施し成果を政策に活用する社会実装に繋がる点など、利点も多い。一方で、研究の枠組みや各種調整、自治体へのフィードバックなど、課題も挙げられる。本SIGでは、自治体との共同でリアルワールドデータ研究を実践している研究者や、これから実施しようと考えている研究者が集い、データマネジメントや分析の方法論に関する情報共有、共同研究の検討等を行っている。その取り組みと今後の展望について紹介する。
【SIG3】(20分)
レセプトデータによる疾患捕捉のアルゴリズム開発とバリデーション
隈丸 拓/竹内 由則
- 要旨:
- レセプトデータを用いた臨床疫学・薬剤疫学研究の妥当性を高める上では、アウトカムや既往歴として捕捉される疾患の正確性が重要である。日本においても、バリデーション研究が増えてきており、そこで開発された捕捉アルゴリズムを基盤に、質の高い臨床研究実施が可能になっている。
バリデーション研究におけるアルゴリズムの開発では、誰を対象に、どのような施設で、何の尺度で、などの基本的なデザインの問いから、どのような層別化を実施するか、結果をどういう形で報告するべきか、を含め各種の検討が必要である。また、解析の結果を解釈する上では、アルゴリズムの正確性がどう推定値に影響を与えるのか、バイアスの評価方法も重要なテーマである。本SIGでは、これらアルゴリズム開発における課題とともに、日本のアルゴリズムをどのように使いやすい形で研究者に提示できるかを議論する。