大会長挨拶

大会長後藤 励
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科/
健康マネジメント研究科
謹啓
ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より学会へのご支援を賜り、誠にありがとうございます。
このたび、2027年3月6日(土)、7日(日)の2日間に、慶應義塾大学三田キャンパスにて日本臨床疫学会 第9回年次学術大会を開催する運びとなりました。
本学会は、2016年に「クリニカル・マインドとリサーチ・マインドを持つ医療者による質の高い臨床疫学研究の振興と研究人材育成を通じて推進し、現在の医療が直面する諸課題の解決に貢献すること」をミッションとして発足しました。
さて、本大会のテーマは「経医済民 ―医をおさめ民をたすく」といたしました。「経済」という語の由来である「経世済民」は、世を経(おさ)め民を済(すく)う、つまり世の仕組みを整えることによって人々を苦しみから救うという意味の言葉です。これを医療におきかえたものが「経医済民」です。医を経める、すなわち医療という営みそのものを整えることは、目の前の患者だけでなく、その先にいる多くの人々の健康を守ることにつながります。
医療者の主な役目は目の前の患者を健康にすることであり、目の前の患者以外の人々の健康を守る手段となるのが臨床研究です。そして、その臨床の営みを日々支えているのが医療保険をはじめとする医療制度です。人口構成の変化、医療技術の高度化、財源制約の高まりという外部環境の中で医療の質と持続性をいかに両立させるのか。この問いに対しては、臨床の実感だけでも、制度の理屈だけでも答えを得ることができません。臨床から生まれた問い根拠に変え、その根拠を制度や政策という社会の仕組みへとつないでいく。臨床疫学は、臨床現場と制度を繋ぐ方法論であると考えます。
本大会では、これまで積み重ねられてきた臨床疫学研究の議論に加えて、臨床現場を支える医療制度そのものを論じる場をつくることを目指します。
本大会は、次の三つの柱で構成いたします。
Main theaterでは、特別講演と特別シンポジウムを開催いたします。特別講演では、臨床家の視点をもつ研究者が、どのように研究の問いに着眼し、その成果を社会実装へと結び付けてきたのかを、多彩な演者にお話しいただきます。特別シンポジウムでは、臨床研究を通して多様なキャリアを実現された方々に、その道のりを語り合っていただきます。さらに、政策の現場に携わって研究者をお招きし、医療制度と臨床研究の接点を論じるディスカッションのセッションを準備しております。
Learning theaterでは、研究の実践的なスキルを伝えるハンズオン形式の教育セミナーを開催いたします。明日からの研究にそのまま生かしていただける内容を揃え、初めて研究に取り組む方にもご参加いただけるよう構成いたします。
一般演題は、ポスター発表および口演発表として広く募集いたします。若手の医療者や学生の皆様にとって、自らの問いを世に出す最初の一歩となる場にしたいと考えております。
日々の臨床に従事して患者の健康を守っているものの、臨床研究や医療制度に触れる機会があまりなかった医療者・学生の皆様にとって、本大会がその世界との出会いの場となることを願っております。臨床に専念することは非常に重要なことですが、少しでも研究や制度の世界に触れてみた上で、臨床一筋、臨床と研究の両立、研究一筋という将来の選択肢をお持ちいただくのはいかがでしょうか。
なお、医薬品・医療機器の開発に携わる企業の皆様、また医療データベースの構築や利活用を担う企業の皆様も、医療に多大なご貢献をされており、当学会は医療者として位置づけております。臨床、研究、産業、政策のそれぞれの立場から集まった参加者が、同じ問いを共有する二日間となれば幸いです。
皆さまお誘い合わせのうえ、多くの方々のご参加を心よりお待ち申し上げております。
謹白
令和8年9月吉日