ついに百花繚乱の時代を迎える臨床疫学
2023.11.11(sat.)~12(sun.)

Learning theater/Working theater

  • Learning theater: LT
  • Working theater: WT

Learning theater: LT

タイムテーブル

Day1:11月11日(土)

10:00-10:45
LT1:リサーチクエスチョンの作り方
土方 保和(北須磨病院 脊椎・腰痛センター 副センター長、京都大学院 地域医療システム学 臨床疫学グループ 非常勤研究員、京都大学院 医療疫学分野 非常勤講師・客員研究員)
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学習達成目標

Clinical Question(CQ)をResearch Question(RQ)に昇華させるための以下の手順を遂行できるようになること.

  • CQを各タイプ(記述・診断/予測・因果)のいずれかに分類する.
  • CQをタイプに基づいたRQの形へ構造化する.
  • RQのFIRM2NESSチェックを行う.
講演概要
学会発表や科学論文を吟味する際に,「この研究結果をどう実臨床に活かせばいいのだろう」と研究の意義の解釈に困窮することは稀ではない.この問題は,その研究で何を明らかにしたいのか?すなわちRQが不明確であることに起因する.研究に必要不可欠な要素を簡潔に表現するRQは,研究の骨組みである.骨組みが脆弱な場合に立派な家が建たないのと同様に,不明確なRQからはじまる研究は診療をかえるインパクトをもち得ない.本講義は,臨床家に響く研究を行う第一歩としての「RQをつくる」能力を習得していただくことを目的とし,日常臨床で遭遇するCQをRQに昇華させ,RQを練る作業を解説する.
10:00-11:30
WT1:はじまりはいつもletter: 執筆ノススメ
吉岡 貴史(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室 特任助教)
10:55-11:40
LT2:混合研究法のRQ構造化
宮下 淳(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー 教授)
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講演概要
量的研究は、要因とアウトカムの関連を検証したり、有病割合を記述したりする研究である。量的研究によって要因とアウトカムに関連やある疾患の有病割合が分かったとして、なぜそのような関連が生じるのか、なぜその程度の有病割合が生じるのかについてはブラックボックスである。一方で、質的研究は、プロセスを明らかにする研究で、臨床現場で起きている現象を可視化することができる。量的研究と質的研究を組み合わせることで、研究者が知りたい量的な結果(要因とアウトカムの関連や有病割合)がわかるだけでなく、同時にその結果を取り巻く現象やその結果が生じるメカニズムを可視化することが可能になる。量的研究の強みと質的研究の強みを最大限に生かして両者が相乗効果を生み出すような洗練された混合研究をデザインする為に、どのようにリサーチクエスチョンを構造化すればよいかを学ぶことを目的とする。
13:15-14:00
LT3:あなたの臨床研究にDAGを活用してみよう-基礎編-
山崎 大(京都大学 特定講師、福島県立医科大学 特任准教授、熊本大学 客員准教授)
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講演概要

臨床家が取り組むのは、「ある要因が病気の発症原因であるのか」、「治療が病気の予後を変えるか」といった因果関係(効果や害)を検証するタイプのリサーチクエスションが多いと思います。因果関係の検証には、まずなぜそのように考えるのかというメカニズム(中間因子)や、比較を邪魔する要因(交絡因子)を詳細に検討する必要があり、その際に概念をまとめる図(DAG: Directed Acyclic Graph)が有用です。DAGを描くことで、多変量解析に投入する必要がある最小限の因子を決めることができ、サンプルサイズの削減にもつながります。本セミナーでは、DAGが因果関係の検証にどのように有効であるのかを理解し、DAGの基礎知識を身につけることで、臨床研究にDAGを活用するための基礎を習得することを目的とします。

  • *同日にWorking Theaterで行われる実践編では、DAGittyというフリーソフトウェアを用いて、実際にDAGを描きながら学ぶハンズオンセミナーを行います。
14:10-14:55
LT4:PROを使って研究をデザインしてみよう
福原 俊一(京都大学 名誉教授、Johns Hopkins大学 客員教授、福島県立医科大学 副学長)
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講演概要

第5回に引き続き同じテーマでお話します。今回は、新しい疾患特異的尺度QDISについてもお話します。
PROは、30年の年月を経て、今や臨床研究において科学的に測定可能な指標として、他の「客観的な」指標と同等の地位を得るに至った。また、FDAなどの海外の規制当局も、観察研究で治療効果を評価する際にPROを含めることが推奨されるようになっている。しかしながら、未経験の多くの研究者にとってはその意義や方法にとって不慣れなことも多いと推察する。
このレクチャーでは、PROを研究の主要なアウトカム指標、あるいは要因に設定する場合の、具体的なポイントや注意点について以下に概説する:

  • PROの測定にはサーベイ研究の基礎的な理論や知識が必要であること
  • 多数のPRO尺度の中からどの尺度を選択するか?その基準。複数のPRO尺度を選択した場合、どのような順序で配置するか、など。
  • PRO測定にまつわるバイアスと対処法
  • 測定結果や分析結果を統計的に解釈するだけでなく、臨床的にどのような意味があるかを解釈する方法
15:00-16:30
WT2:あなたの臨床研究にDAGを活用してみよう-実践編-
山崎 大(京都大学 特定講師、福島県立医科大学 特任准教授、熊本大学 客員准教授)
15:05-15:50
LT5:医療経済評価研究におけるQoL
山本 洋介(京都大学大学院医学研究科 医療疫学分野 教授)
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講義概要
QoL(Quality of Life)をアウトカムとした臨床疫学研究は多数実施されているが、それらの研究のほとんどは、包括的・疾患特異的を問わずプロファイル型のQoL尺度で測定された結果に基づくものである。一方で、医療経済評価研究においては、対象となる者が感じる健康状態を一次元で表す指標である効用値(またはQoL値)で調整した生存年(Quality-adjusted life years; QALY)を効果指標として用いることを原則とする。このLTでは、効用値を得るためのインデックス型尺度について俯瞰するとともに、プロファイル型尺度から効用値を得るための手法についても学ぶ。さらに近年、一般に利活用可能なリアルワールドデータにおいて、一部の対象者において効用値が含まれているものが存在する。その研究の具体例についても紹介する。
16:00-16:45
LT6:系統的レビュー・メタ解析入門:初学者が最初でつまづかないためのポイント
水原 敬洋(横浜市立大学 データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 准教授)
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講義概要・講義目標
系統的レビュー・メタ解析論文を読んだ事はあるけれど結果の読み方や解釈に自信がない、という方は多いかと思います。フォレストプロともしっかり読むためにはいくつかのポイントがあり、さらにはメタ解析における異質性の理解や統合モデルの考え方などは初心者にはハードルが高い部分です。本講義ではそれらを理解するためのポイントを時間の許す限り徹底的に解説いたします。明日からより深く論文を読めるようになる事はもちろん、将来系統的レビュー・メタ解析研究を行う呼び水になるような講義を目指します。
<参考図書>
コクランハンドブック(オンライン版)

Day2:11月12日(日)

9:00-9:45
LT7:変数の種類と基本的な多変量解析
清水 さやか(京都大学 地域医療システム学講座 特任助教、一般社団法人 PeDAL 研究部門長)
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講義概要
臨床研究の論文を読むために、また、臨床研究を実践するために、知っておくべき基本的な多変量解析について学びます。
学習達成目標
  • 変数の種類を説明できる
  • アウトカムの変数の種類に対応した多変量解析を選択できる
  • 多変量解析の結果として得られた指標を解釈できる
9:00-10:30
WT3:自己対照研究デザインをマスターしよう
岩上 将夫(筑波大学 医学医療系 准教授)
9:55-10:40
LT8:これからの診断研究 -感度・特異度の一歩先へ-
高田 俊彦(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー准教授)
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講義概要
“従来”の診断研究では、評価の対象であるindex test(病歴・身体所見・血液検査など)の診断精度を感度、特異度などの指標を用いて評価してきた。しかし、実際の医療現場における診断プロセスでは、複数の情報を組み合わせることで疾患の可能性を見積もっている。個々の情報は、互いに独立しておらず(発熱と炎症反応など)、それぞれの尤度比を単純に掛け合わせて、疾病の事後確率を求めることはできない。また、通常の診断プロセスでは、患者の基本属性、主訴といったシンプルな情報から、より詳細な病歴、身体所見、血液・画像検査といった順序で情報が得られる。そのため、血液・画像検査といった、診断プロセスの中で後から得られる情報に関しては、病歴や身体所見といった事前に得られる情報にどれだけの付加価値があるのかを評価すべきである。本セッションでは、検査の付加価値を評価する “これからの”診断研究の方法論について解説する。
13:00-13:45
LT9:効率的な文献検索のステップ
佐々木 彰(京都大学医学附属病院 臨床研究教育研修部/特定講師、福島県立医科大学 臨床研究イノベーションセンター/特任准教授)
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講義概要
日常診療および臨床研究において生じる様々な疑問に対して文献検索が行われます。また、昨今のAIツールの発達により、文献検索のプロセスは簡略化されてきています。そのような状況で、どのような場面において、どのようにAI・非AIツールを用いて文献検索を行うべきか迷っている方は少なくないのではないでしょうか?本レクチャーでは、文献検索に慣れていない初学者を対象に、場面および目的に適した文献検索を効率的に行うSTEPを習得することを目的とします。
13:15-14:45
WT4:スキルアップ!診断研究のデザイン戦略
高田 俊彦(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー 准教授)

Working theater: WT

タイムテーブル

Day1:11月11日(土)

10:00-10:45
LT1:リサーチクエスチョンの作り方
土方 保和(北須磨病院 脊椎・腰痛センター 副センター長、京都大学院 地域医療システム学 臨床疫学グループ 非常勤研究員、京都大学院 医療疫学分野 非常勤講師・客員研究員)
10:00-11:30
WT1:はじまりはいつもletter: 執筆ノススメ
吉岡 貴史(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室 特任助教)
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講演概要
臨床研究のFINER/FIRM2NESSを磨くためには、論文を適切に解釈する必要があります。また論文化には「書く」という障壁が存在します。実はletter執筆は、(1) 適切な論文の解釈、(2) 論文執筆、の2つを含むため、臨床研究の第一歩としてぴったりなのです。本ワークショップでは、事前学習資料通して臨床研究を解釈し、letterを執筆することを第一の目標とします。さらに、letterをきっかけに臨床研究の原著論文を出版した先人の講演を準備しました。この講演をきっかけに、letter執筆から始まる臨床研究に興味を持つことを第二の目標とします。
対象
  • 初級〜中級
事前学習
  • あり(事前学習資料と課題論文の読み込み)
  • 当日の約1-2週間前に、事前学習資料と課題論文を配布
当日行うこと
  • グループワーク(65分)+講演 (20分)
  • 余力があるグループはletter執筆・投稿まで支援します
特別講演講師
  • 船田 哲(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 特任助教)
10:55-11:40
LT2:混合研究法のRQ構造化
宮下 淳(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー 教授)
13:15-14:00
LT3:あなたの臨床研究にDAGを活用してみよう-基礎編-
山崎 大(京都大学 特定講師、福島県立医科大学 特任准教授、熊本大学 客員准教授)
14:10-14:55
LT4:PROを使って研究をデザインしてみよう
福原 俊一(京都大学 名誉教授、Johns Hopkins大学 客員教授、福島県立医科大学 副学長)
15:00-16:30
WT2:あなたの臨床研究にDAGを活用してみよう-実践編-
山崎 大(京都大学 特定講師、福島県立医科大学 特任准教授、熊本大学 客員准教授)
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講演概要

臨床研究を行う際に、「ある要因が病気の発症原因であるのか」、「治療が病気の予後を変えるか」といった因果関係(効果や害)を検証するタイプのリサーチクエスションに取り組むことが多いと思います。
因果関係の検証には、まずなぜそのように考えるのかというメカニズム(中間因子)や、比較を邪魔する要因(交絡因子)を詳細に検討する必要があり、その際に概念をまとめる図(DAG: Directed Acyclic Graph)が有用です。DAGを描くことで、多変量解析に投入する必要がある最小限の因子を決めることができ、サンプルサイズの削減にもつながります。またバイアスの可視化にも役立ちます。
本セミナーでは、オリジナル資料で事前にDAGについて学んでいただきます。当日は、DAGを描くためのフリーのソフトウェアDAGittyを使い、ケーススタディ形式で様々なDAGを実際に描くことで、自分でDAGを描けるようになることを目標にします。

  • *同日にLearning Theaterで行われる基礎編では、本セミナーの事前学習で使用する動画の内容を主に解説します。基礎編の内容は動画で解説していますので基礎編の受講は必要ありませんが、動画だけでなく、ライブ講義を聴くことで理解したい方はご参加ください。
  • **本ワークショップは、DAGを描くという実践をできるだけ多く行います。これまでに私のDAGセミナーを受けられた方も、実践して学びを深めることができますので、歓迎致します。
対象
初級~中級
事前学習

事前学習動画+オリジナル学習資料±参考論文

  • 参考論文を読むことは必須ではありません。
当日行うこと
フリーのソフトウェアDAGittyを使い、ケーススタディ形式で様々なDAGを実際に描く演習
15:05-15:50
LT5:医療経済評価研究におけるQoL
山本 洋介(京都大学大学院医学研究科 医療疫学分野 教授)
16:00-16:45
LT6:系統的レビュー・メタ解析入門:初学者が最初でつまづかないためのポイント
水原 敬洋(横浜市立大学 データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 准教授)

Day2:11月12日(日)

9:00-9:45
LT7:変数の種類と基本的な多変量解析
清水 さやか(京都大学 地域医療システム学講座 特任助教、一般社団法人 PeDAL 研究部門長)
9:00-10:30
WT3:自己対照研究デザインをマスターしよう
岩上 将夫(筑波大学 医学医療系 准教授)
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講演概要
本ワークショップでは、2年前の第4回年次学術大会にてオンラインで行いました自己対照研究デザイン(Iwagami M, Takeuchi Y. Ann Clin Epidemiol. 2021;3:67-73)のワークショップを、今回は現地で行います。当日は、自己対照研究デザインについての概要説明、最新の事例紹介、統計ソフトRを使った講師側によるデモンストレーション、質疑応答を行います。みなさまの御参加をお待ちしております。
対象
初級〜中級
事前学習

事前学習は必須としませんが、

  • 自己対照研究デザインの総説 (Iwagami M, Takeuchi Y. Ann Clin Epidemiol. 2021;3:67-73)
  • 国際薬剤疫学会のガイダンス(Cadarette SM, Maclure M, Delaney JAC, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2021;30:671-684)
  • Rの練習用データセット・コマンド(約1~2週間前に配布します)

に目を通し、御自身のパソコンで Rの練習用データセット・コマンドを試しておいていただくと、よりスムースに当日の講義およびデモンストレーションが理解できると思います。

当日行うこと
  • 自己対照研究デザインについての概要説明
  • 最新の事例紹介(Takeuchi Y, Iwagami M, Ono S, et al. Vaccine. 2022やAkaba T, Jo T, Iwagami M, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2023など)
  • 統計ソフトRを使った講師側によるデモンストレーション(時間の関係上、講師側で画面を提示するのみとし、参加者の方々に御自身のパソコンで作業していただくことは致しません)
  • 質疑応答
特別講演講師
  • 竹内 由則(横浜市立大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科 准教授)
  • 石丸 美穂(東京医科歯科大学 統合教育機構 特任助教)
9:55-10:40
LT8:これからの診断研究 -感度・特異度の一歩先へ-
高田 俊彦(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー准教授)
13:00-13:45
LT9:効率的な文献検索のステップ
佐々木 彰(京都大学医学附属病院 臨床研究教育研修部/特定講師、福島県立医科大学 臨床研究イノベーションセンター/特任准教授)
13:15-14:45
WT4:スキルアップ!診断研究のデザイン戦略
高田 俊彦(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー准教授)
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講演概要
診断精度研究のデザインにおいて、特に重要なポイントとしてPatients(対象患者)、Index test (評価の対象となる検査)、Reference test(診断の有無を決定づける検査)の3つが挙げられる。それぞれのポイントについて理想的なデザインを用いようとすると、実診療との乖離が生じ、研究の実施可能性に問題が生じることがある。本ワークショップの目的は診断精度研究のデザインについて理解を深め、研究のための“理想”と診療における“現実”との間のバランスの取り方について学ぶことである。具体的には、すでに出版された論文を題材に、診断精度研究の報告ガイドラインであるSTARD 2015を参考にしながら各ポイントにおける問題点や、それによって派生しうるバイアスを抽出し、より良いデザインにするための方略についてグループワークを通じて学習する。
対象
初級〜中級
事前学習
  • あり(課題論文、STARDチェックリストの読み込み)
  • 約1-2週間前に、事前学習資料を配布します。
当日行うこと
グループワーク+解説