学会について
代表理事からのご挨拶
代表就任のご挨拶

代表理事 二宮 利治
(九州大学)
この度、福原俊一前代表理事の後任として、代表理事に就任いたしました二宮利治と申します。福原前代表理事は、わが国における臨床疫学の発展を長年にわたり牽引されるとともに、日本臨床疫学会の基盤を築き、その歩みを大きく前進させてこられました。その多大なご功績を受け継ぐ職責の重さに、身の引き締まる思いでございます。
日本臨床疫学会は、クリニカルマインドとリサーチマインドを有する医療者のための学会です。臨床疫学は、医療の現場における課題を適切に捉え、科学的な方法によって検証し、その成果をよりよい医療につなげていくための学問です。診断、治療、予後、予防、医療の質、患者さんの生活に関わる多くの課題に対して、確かなエビデンスを創出し、社会に還元していくことが、臨床疫学の重要な役割です。なお、ここでいう医療者には、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士をはじめとする医療専門職に加え、医療産業に携わり医療の発展に貢献されている方々も広く含みます。本学会は、こうした多様な立場の方々が、それぞれの経験や専門性を持ち寄り、学び合い、議論し、新たな研究や協働を育む場でありたいと考えています。
今後は、若手研究者の育成、多職種・多領域の連携、質の高い臨床研究の推進を通じて、日本における臨床疫学のさらなる発展に貢献してまいります。そして、研究から得られた知見を、患者さん、医療現場、社会に届け、よりよい医療の実現につなげていきたいと存じます。
今後とも、日本臨床疫学会へのご支援とご参加を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
代表退任のご挨拶

初代代表理事 福原 俊一
(京都大学、福島県立医科大学、Johns Hopkins大学)
このたび、代表理事を退任し、二宮利治理事にその任を引き継ぐこととなりました。これまで当学会を支えて下さいました会員、専門家、委員、理事、事務局すべての皆様に、心より感謝申し上げます。この8年間、誠にありがとうございました。
学会創設を前に、私には迷いがありました。「この学会は、何のために存在するのか」。その問いに答えを与えてくれたのが、創設者のお一人二宮理事との対話でした。そこで二人がたどり着いたのは、「クリニカルマインドとリサーチマインドをあわせ持つ医療者のための学会」という理念です。この言葉によって学会の進むべき方向が定まり、私の迷いも消えました。 二宮理事は、後任というだけでなく、この学会の理念をともに形づくったFounding Presidentです。同じ理念を共有する二宮理事に代表を託せることを、心からうれしく思います。
創設から8年の間に、臨床研究を取り巻く環境は大きく変わりました。とりわけ因果推論の登場と臨床疫学への導入は、観察研究から医療の意思決定に資する答えを導く道を拓きました。因果推論は、専門家が作った高度な解析手法だと誤解されがちですが、本質は、医療者の問いを明確にし、因果を見極めるための前提を吟味する考え方の基盤です。1980年代因果推論の黎明期にこの考え方の基盤を作った中心人物の一人で、時間とともに変化する要因や治療の効果を明らかにする画期的な方法論を開発したJames Robinsが、当時、疫学や統計学の専門家ではなく、PhDも持たない、地域で働く一人の医師であったことに、私は当学会の理念との深い親和性を感じます*。
因果推論に加え、いまAIの活用が臨床疫学の世界に急速に広がっています。その未来を正確に予測することはできません。しかし、方法がどれほど進歩しても、臨床疫学の原点は変わりません。患者や医療者の切実な「お困り事」を見いだし、科学の言葉に置き換え、研究から得た知見を再び医療の意思決定の場に返す。この循環を絶やさないことが、本学会の使命です。横の軸では、職種を超えて全ての医療者へ輪を広げる。縦の軸では、原点と志を次世代へ継承し、未来へ発展させる。二宮代表理事のリーダーシップもと、この二つの軸がさらに力強く伸びることを願い、本学会の未来を会員の皆様に託します。
- *臨床疫学の歴史、因果推論は臨床疫学に何をもたらしたか?について講演した動画を会員用Home pageにアップします。よろしければ御覧下さい。